混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 まるで自慢するようにガブリエルが言うと、リリは顔を輝かせた。

「イザベラって、イザベラ・クリフトン! サンシャイン・ワールド誌の? 私、あなたの記事読んでる! 企業潜入で、いじわる上司をこきおろしたのは最高だった!」

 リリが言っているのは、少し前にやっていた、『イザベラ・クリフトンの覆面調査』というシリーズで、キーパンチャーのふりをして、とある会社に就職し、主任と言われる男性社員が、キーパンチャーの女性たちに対して、傍若無人に振舞っている姿を赤裸々に書いた記事だった。

 もちろん、記事を書いた段階で、一度戻し、内容等に確認をした上だったが、イライザが記事を書いて、戻した時に、その、傍若無人社員は社内から消えていたという。

 元々、キーパンチャーの一人がサンシャイン・ワールド誌に匿名で投書をしてきたのがきっかけで、投書は裏取りをするつもりだったものが、イザベラの容赦ない筆致で、シリーズ化した。

 三社ほど周って記事にした時点でネタ切れとなり、早々に終わったシリーズだったが、まさか遠くニコロ島にまで読者がいるとは思わなかった。

「女だから、というだけで、軽んじるような者達は、先刻淘汰されるべきだ、あなたの記事は、働く女に勇気をくれた、あれを読んで救われたと思った女は少なくないと、私は思うよ」

 リリの口調は、少しばかりぶっきらぼうではあったけれど、真っ直ぐな賛辞にイライザは大いに照れた。
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