混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「何をしている」

 男の手を掴んでいるのはリリだった。

「何だ、また女かよ」

 そう言いながら、男は、露出の多いリリの衣装に一瞬目を奪われた。イライザは、酔っていたせいか、理性が飛んでいた。普段であれば想像もしないような行動に出た。

「があッ……!!」

 男は、イライザの胸ぐらを掴んでいた手を離し、イライザが蹴り上げた部分を抑えるようにしてうずくまった。

 片手はリリに掴まれたまま、もう片方の手で股間をおさえながら、その場にへたり込みそうになっている。

 イライザが、目一杯の力を込めて、男の股間を蹴り上げた為だった。

 解放されたイライザは、着崩れたドレスを整えながら、呼吸をととのえた。急に動いたせいか酔が周ったような気がして、よろけたところを、誰かの手によって抱きとめられた。

「大丈夫ですか?」

 抱きとめてくれたのはガブリエルだった。心配そうな顔をして覗きこむガブリエルの顔の近さに、驚いてイライザが逃げようとしたところで、本格的にこみあげるモノがきた。

 ダメだ、それは、女として以上に人としてダメだ、と、イライザは思ったが、すでに身体を自由に動かす事ができず、そのまま倒れこんでしまった。

 ……以降、イライザの記憶は途切れた。
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