混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 イライザは、恥ずかしさでいたたまれなくなりながらも、ベッドに潜り込む事はしなかった。今、下着姿で無かったら、そのままベッドの上に座して頭を下げたいほどだったが、およそ人前(しかも妙齢の男性の)に出るのは憚られ、寝具で前を隠すようにしながら、声だけは精一杯詫びた。

「「申し訳ありませんでしたッ!」」

 イライザの声と、ガブリエルの声がほぼ同時だった。

 二人は互いを見ながら、双方で次の言葉を待った。

「「あのッ……」」

 またしても、相手の言葉を遮ってしまった事への罪悪感と、昨晩の醜態を思い、イライザは気絶したくなった、しかしできなかった。

 もう、このまま石になってしまいたい……、そう思い、青ざめていると、ようやく同調の輪が崩れたと感じたのか、ガブリエルがイライザのいるベッドに腰掛けた。

 その様子は、言葉を選んでいるようでもあり、昨晩のイライザの様を思い出しているようでもあり、イライザはひどく居心地が悪かった。

 今いる場所が何階かはわからないが、いっそ窓から飛び降りてしまおうかとすら思った。しかし、そうするには、ガブリエルの前に下着姿を晒さなくてはならない。

 それでは恥の上塗りだ。

 昨晩どれほどひどい有様を見せたか記憶に無いのは、むしろよかったんだろうか。

 ふるふると震えながら、思い切ってイライザが顔をあげると、ガブリエルの笑顔があった。

 ……読めない、と、イライザは思った。
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