混戦クルーズ！ 造船王は求婚相手を逃さない

　口をつけて、喉が乾いていた事を思い出したイライザは、無作法だと思いながら、一息に飲み干した。

　もし、この場に女将がいなかったら、ピッチャーを奪い取ってジョッキのように飲み干しそうなほどに、イライザの喉は乾いていた。

　ごくごくと水を飲み干すイライザの様子に安心したのか、女将は部屋の備え付けられた物入れからドレスを一着出してくれた。

「これ、私の若い頃のもので、まあ、粗末ではあるけど、間に合わせに良かったら着ておくれ、お嬢さんのドレスは、まだ乾いていなくてね」

　喉の乾きが潤ったイライザは、遠慮無くそのドレスを借りる事にした。

　凝った造りのドレスでは無いが、染の美しいドレスは、胸がゆるく、腰回りはややキツかったが、着心地がよく、動きやすい為、それほど気にはならなさそうだった。

「あー、私のお古の中では一番丈の長いやつを出したけど、お嬢さんは上背があるねえ、まあ、乾くまでの短い間だし、我慢しておくれ」

　女将が髪をすいてくれて、イライザの身支度が整うと、去り際に女将が言った。

「食欲がありそうなら、降りておいで、朝ごはんにしよう」

　言われて、イライザは自分が空腹な事に気がついた。

　……吐いてしまったのか……美味しかったのに、と、一瞬品のない考えがよぎったが、女将の招きに甘えようと、イライザは女将を追おうと立ち上がった。

　立ち上がり、窓の方へ行くと、ララティナの港町、眼下には、石畳の道路が見えた。既に町は起きだして、道行く人は、せわしなく行き交っている。