混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
13)イライザの正体
女将の夫だという店主(イライザは初めて会ったが、いつも厨房に入ったきりで、外に出てくる事が無いらしい)は、昨晩の騒ぎについて詳しくは知らないのか、黙々と食事をしている。
朝食は、特別豪華なメニューでは無いが、どれも出来たてで美味しそうだった。店主の料理が美味な事は、昨晩から気づいていたが、それは、朝食についても言える事だった。
パンケーキ、サラダ、卵料理。ごく普通で、特別なものはないのだが、どれも火加減、塩加減が絶妙で、空になった胃が、満たされていった。
一口食べて、空腹だった事を思い出したイライザは、しばらく無言で朝食に集中した。
女将が、ああ、そうだった、と、一度厨房に戻り、湯気のたつ皿をもうひとつ運んできた。
それは、魚介で出汁をとったと思われるスープだった。
イライザの前にそれを置いて、女将が言った。
「二日酔いには、このスープがいいんだよ」
悪意などみじんも無い、純然たる善意だった。
目の前に置かれたスープは、香りもよく、いっそうイライザの食欲を誘う。
「そんな……」
申し訳なさでイライザが言うと、女将は今日何度目かの笑顔を見せて繰り返した。
「言ったろ? あんたには感謝してるんだって」
「でも、あんな騒ぎに……」
恐縮してイライザがカトラリーを置くと、女将はかぶりを振った。
「売上はたんまり叩きだしたし、迷惑してた常連客も追っ払ってもらえたし、倍賞諸々はそちらでもってくれるそうだ、そうだね? 旦那?」
女将は、そう言って、隣に座っているガブリエルの背をポンと叩いた。
朝食は、特別豪華なメニューでは無いが、どれも出来たてで美味しそうだった。店主の料理が美味な事は、昨晩から気づいていたが、それは、朝食についても言える事だった。
パンケーキ、サラダ、卵料理。ごく普通で、特別なものはないのだが、どれも火加減、塩加減が絶妙で、空になった胃が、満たされていった。
一口食べて、空腹だった事を思い出したイライザは、しばらく無言で朝食に集中した。
女将が、ああ、そうだった、と、一度厨房に戻り、湯気のたつ皿をもうひとつ運んできた。
それは、魚介で出汁をとったと思われるスープだった。
イライザの前にそれを置いて、女将が言った。
「二日酔いには、このスープがいいんだよ」
悪意などみじんも無い、純然たる善意だった。
目の前に置かれたスープは、香りもよく、いっそうイライザの食欲を誘う。
「そんな……」
申し訳なさでイライザが言うと、女将は今日何度目かの笑顔を見せて繰り返した。
「言ったろ? あんたには感謝してるんだって」
「でも、あんな騒ぎに……」
恐縮してイライザがカトラリーを置くと、女将はかぶりを振った。
「売上はたんまり叩きだしたし、迷惑してた常連客も追っ払ってもらえたし、倍賞諸々はそちらでもってくれるそうだ、そうだね? 旦那?」
女将は、そう言って、隣に座っているガブリエルの背をポンと叩いた。