混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「ええっ! それはいけません、私のせいであんな事になったんですから、賠償は私が」

 言いかけて、ガブリエルが会話に入ってきた。

「いいえ、そもそもの原因は、私が貴女にお酒を薦めたからあんなところに」

「いえ、私はお断りする事もできたんです、お酒に酔って狼藉を働くなんて、それだけでも恥ずかしいのに、責任をとらずにいるなんてできません」

 きっぱりと言いつつ、イライザは心の中で、第一、この店に入ったのだって、ガブリエルの後を追って来たのが原因なのだ、全ては自分の責任だと、イライザは無言で自分を責めた。

 しかし、

「いえ、その……狼藉、という事だと、私も、その……」

 唐突にガブリエルの歯切れが悪くなった。

「その、イザベラ、……本当に、昨夜の事は、おぼえていないんですか?」

「男性にお酒を浴びせかけて、その後、……あなたに助けていただいたところで、ふっ……と、他にも私のしでかした事があるのでしたら言ってください、できる限りの事はしますから」

 イライザがそう言い切ると、ガブリエルの顔が真っ赤になった。

 しかし、そのように顔を染めながらも、ガブリエルはイライザの手をとった。

「責任を、とる、そう、おっしゃるんですか、貴女は……」

 ガブリエルは、顔を赤く染めながらも、その眼差しは真剣そのものだった。

「はい、私にできる事でしたら」

「あなたならできます、……いいえ、あなたにしか、できない事があります」

 イライザの手をとるガブリエルの手に力がこもり、その熱までも伝わりそうな勢いで、ガブリエルは両手でイライザの手をとった。

 意に反して、ガブリエルと見つめ合う事になったイライザは、視線を外せず、誰かこの均衡をやぶってはくれないだろうか、と、思い始めていた。
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