混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 そんな時に、助け手が現れた。

 店の扉が開く、あわてて女将が、

「すみません、まだ開店前で……」

 と、来客に説明しようと近づいていった、その時。

「イライザ、いえ、イザベラ! あなた、いったい何をやったんです!」

 ずかずかと店内に入ってきたのは、イライザ(の、ふりをしているアレン)だった。

「ア、イライザ、あの、これはね?」

 イライザが説明するより先に、イライザ(の、ふりをしているアレン)が、ガブリエルの方を向いて、言った。

「イザードさん、彼女は、記者で、いっぱしの職業婦人ではありますが、未婚の女性です、このような形でなし崩しに宿に戻らなかった、などと、悪いうわさがたったら、どうなさるおつもりなんですか!」

 イライザ(の、ふりをしているアレン)は、一睡もしなかったのか、ドレスはよれよれで、目の下にはクマができている。イライザがいつまでも戻らず、かといって、ホテルを離れては、戻ってきたイライザを迎える事もできず、まんじりとしていたところに、ガブリエル・イザードからの使いがきたのが、いまさっきの事だった。

 怒り心頭のイライザ(の、ふりをしたアレン)と共に来たらしいガブリエルの使いが、息を切らせて追いついて、女将にもらった水を一息に飲み干して説明してれた。

 場所を変えましょうか、という、女将の提案で、二階に朝食と一緒に移されて、イライザが寝かされていた部屋に、ガブリエル、イライザ、イライザ(の、ふりをしたアレン)の、三人が残された。
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