混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「……私は、その、イザベラ嬢に……」

 わずかに言いよどむガブリエルを、イライザとアレンが固唾を飲んで凝視する。

「責任をとらなくてはならないような、行為を……」

「「えええええええええええええええ!!!」」

 イライザとアレンが同時に大声をあげた。

 階下にいるであろう女将と店主は、上の階の騒ぎなど気にもしていないのか、階段を昇って様子を見に来る気配は無かった。

「どどど、どういう、こと、ですかッ!」

 あわててイライザは自分の身体を改めようとしたが、目の前にいるのは男二人。(内一人は女装だが)衣服を脱いで確かめるわけにはいかない。

 イライザは、目覚めた時の様子を思い返して、身体に痛みは無いか、衣服に乱れた様子は無かったか思い出そうとした。

 目覚めた時は、ひたすら喉が乾いていたのと、妙に清々しいというか、スッキリしていた感覚以外、とりたててここが違うという部分は無かった。

「貴様ぁ〜〜〜〜!」

 アレンが、ガブリエルの喉元を掴み、ガブリエルに掴みかかった。

 驚いたイライザがあわててアレンを止める。

「ダメ! アレン! やめて!」

 イライザが止めに入ったところで、我に返ったのか、アレンが青ざめている。

 アレンがあわてて腕の力を緩めると、戒めを解かれたガブリエルが咳き込みながらイザベラとイライザ(の、ふりをしたアレン)を交互に見た。

「私も、説明を求めてもよろしいですか?」

 ガブリエルはいつのまにか呼吸を整え、先ほどは、すわ、修羅場か、と、なりそうだったとは思えないほどに落ち着いた様子で、二人に席を薦めた。
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