混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 上階が静まったのを見計らったように、女将が紅茶の入ったポットを持ってきて、冷めてしまったコーヒーポットを回収していった。

 空気を読んだか、女将は用事を済ませると、そそくさと去って行った。

 改めて着席し、お茶を飲むと、三人ともびっくりするほど落ち着いた。

 しかし、互いに牽制しあってしまって、誰も言葉を発さない。

 イライザは、ガブリエルに何をされたか、を聞きたいと思っている。

 アレンもまた、ガブリエルがイライザに何をしたか、が、気になっている。

 ガブリエルは、アレンの正体について説明を求めたいようだった。

「まず私が言いますが、責任はとります」

「誰が、誰に対して、何を? というところに説明を求めます」

 理路整然と、しかし動揺を隠し切れない様子でイライザが尋ねた。

「イザベラ・クリフトン嬢に……」

 ガブリエルは、そこまで言って顔を赤らめた。

「きーさーまーーーーーッ!」

 アレンが立ち上がって掴みかかろうとしたのをイライザが制した。

「見ず知らずの方に貴様呼ばわりされる言われはありません」

 そう、ガブリエルに言われると、アレンとしては、返す言葉が無かった。

「あなたは、誰なんですか、私は、ついさっきまで、イライザ・アトキンソンだと思っていたあなたは、……どうやら、女性では無いようですが」

 そう言われると、アレンは弱い、一瞬イライザの方を見て、観念したように着席した。
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