混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「彼は、私の幼なじみなんです、アレン・アトキンソン、従兄弟で、ブルームーン商会の従業員です」

「何故、ブルームーン商会の従業員が? そもそも、イライザ・アトキンソン嬢はどこへ行ったのですか」

「……あなたの、目の前です、イザベラ・クリフトンは、私、イライザ・アトキンソンのペンネームなんです」

 イライザが言い切ると、ガブリエルは目を見開いた。

「あなたを、騙した事については、謝罪します」

 いまだに興奮が抜けない様子ではあったが、アレンがひとまず謝罪した。

「……すみません、驚きすぎて、少し、混乱しています、では、イザベラ嬢が、イライザ嬢だと?」

 ガブリエルが気にしているのは、縁談の相手が実は男だった事では無く、記者として仕事を依頼していた、そして、昨夜、何事かがあったと思われるイザベラがイライザであった事の方が驚きのようだった。

「はい、そうです」

 イライザが言うと、ガブリエルは打ちひしがれたようにテーブルにつっぷした。

 そして、思いついたように顔をおこして、きっぱりと言った。

「結婚して下さい」

「ふざけるな!」

 どこか吹っ切れてしまったガブリエルと、昨夜の出来事について気をもむアレンが、どこまでいっても平行線だ。

 イライザとしても、『昨夜の事』については気になっているところであったが、結果として、『責任をとる』に繋がる出来事を考えるのが怖かった。
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