混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「待ってください! 一度、整理させて下さい」

 頭をおさえるようにして、イライザが言った。

「イザードさん」

「はい」

「昨夜の事、私、覚えてません、覚えていないという事は、その事実は無かったという事です」

 きっぱりと言い切ったイライザにアレンとガブリエルが不服そうに異を唱えようとしたが、そんな男二人にイライザは言い切った。

「仮に、私の純潔が失われたんだとしても、私が覚えていない、認識していない以上、その事実は存在しないんです」

「おっしゃっている意味がわからないんですが……、私の方には記憶があるんですよ?」

「妄想です」

「バカな、イライザ、君は何を言うつもりで」

「私は、仕事に集中したいんです、イザードさん、記者として、イザベラ・クリフトンとして、仕事を全うする為に、イライザ・アトキンソンへの縁談は邪魔だったんです、ですから、アレンに無理を言って、私のふりをしてもらいました、あなたを騙す事になってしまった事は謝罪しますが、どうか、私に仕事を全うさせてください」

「つまり、この航海が終わるまで、縁談については凍結したいと?」

「お断りしていただいてもかまいません、私のした行為には、それだけの重さがあると考えています」

「私は……」

 ガブリエルの発言を遮るようにアレンが言った。

「イライザ、僕は反対だ、酔いつぶれた女性に不埒な行いをするような男だぞ」

「私は、酔いつぶれていたとしても、本当にされて嫌な事だったら、どんな事をしても拒否したと、信じたい」

「本気で言ってるのかい?」

 アレンがガブリエルをきつく睨みながら言った。
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