混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 ガブリエルとアレンは、互いに遠慮をしないという点において、奇しくも、言いたいことを言い合える仲になったようだ。

「さ、では、参りましょうか」

 ガブリエルが、自らエスコートせんと、イライザに対して腕を差し出した。

「もちろん僕も行くからね」

 アレンの方も負けじと腕を差し出す。

「私、一人で行動してはいけませんか?」

 イライザが二人に対して言った。

 ガブリエルもアレンもどことなく不服そうにしているが、イライザが一人で行動したいという事の意味もわきまえていた為、追求する事ができなかった。

 今回の依頼、旅行記はイザベラ・クリフトン、つまり、イライザに一任されている。誰かに連れられての見聞ではあまり意味が無いのだ。

 イライザが、見聞きした事を、旅の記録として残す。それがどれほど、記者としてのイザベラを信頼している依頼だろうか、イライザはどんな事を引換にしても、この仕事をやり遂げる覚悟があった。

 そして、ガブリエルにもある程度の打算はあった。ララティナ港は、外海の港としては、例外的に治安が良い。寄港、風土によるところも大きいが、女の足で移動可能な規模でもある。

 もちろん、遠巻きに護衛につく気持ちもあった。ガブリエルは、何よりも、記者としてのイザベラの視点に惹かれ、依頼をしている。彼女が何に惹かれ、何を見、そして、何を書き記すか興味があったのだ。
< 73 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop