混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「今、私はクイントの軍人だ、立場上、そういった行動をとることはできない」

 何故、軍人になったのか、イライザは尋ねなかった。リリの葛藤、悔しさと、島を守りたいという気持ち。

 今の彼女は王族では無いが、その心構えは女王のそれのように、イライザには思えた。

「……わかった」

 イライザは、リリの意気に答えたいと思った。

「でも、私にできると思う?」

 イライザは、自分にできる事があるなら何でも協力したいと思った。しかし、自信も無かった。リリの望みに足る能力を自分が持っているのか、イライザには断言できない。

 広い世界を見るという事、自分の知らない事を知るという事。リリからの提案は、イライザのそうした知識欲を満たすに充分な課題だが、イライザにそれを受け止められるだけの器があるのか、自分では判別できない。

 やりたいと強く思う気持ちと、できるのだろうかという不安がせめぎ合う。

「あなたは、どう思ってる?」

 リリは、イライザの瞳の奥を覗きこむようにして言った。

 そう、これは、『やれるか』ではなく『やりたいか』を尋ねられている。
 ならば答えはもう決まっていた。

「やりたい、やらせて欲しい」

 イライザの力強い言葉に、リリは満足したようだった。

「よかった、私は、あなたならできると思ったから頼んだ、あなたは、あなたを見出した私を信じてくれた、とてもうれしい、ありがとう」

 そうして、リリとイライザは、固い握手をした。

 握手の後、イライザがリリに尋ねた。

「……ところで、昨晩の記憶が無いのだけれど、あなた何か知らない?」

 リリは目を見開き、その後、声をあげて笑った。
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