混戦クルーズ！　造船王は求婚相手を逃さない
「おや、いらしたのは、イライザ嬢では無かったのですね」

　リリ・ドミニスの私邸、オーウェンに言って無理やり案内させて来たアレンは、そこで、思いがけない人物に会っていた。

「ええ、彼女は『置いてきました』」

　目の前にいるアレンが、女装していたとは思いもよらない相手に対して、アレンはあくまでも、イライザは別にいる体で話をしている。

「なぜあなたがここに？」

　思いもよらない人物の登場に驚きながら、アレンが問いかけた相手は、イザード造船、ガブリエル・イザードの片腕と目される、マイケル・ニュートンその人だった。

「そうですね、説明してもいいのですが、今は時間が惜しいので」

　マイケルが手を叩くと、隣室に控えていたのか、海兵が数名、姿を表した。屈強な鍛えられた身体を惜しげなくさらしている。

「説明の手間をはぶいて、そういった方々を呼ぶとは、中々に下世話なやりかただね、ニュートンさん」

「マイケルでどうぞ、命まではとりませんよ、ちょっとの間、おとどまりいただくだけですので」

「それは、ホテルに残してきたイライザを拉致するまでの間、という事かな」

　アレンとしてはかまをかけたつもりだった。マイケルの狙いがアレンが扮装していたイライザであれば、それはそれで都合がいい。少なくとも、女装したアレンを探す限り、彼らはイライザを見つける事ができないからだ。

「さすが、理解が早くて助かりますよ」

　余裕があるせいか、マイケルは薄く微笑みを浮かべながら、答えた。
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