混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
 ガブリエル・イザードは、一人、悶々としていた。遠巻きに護衛すると言った以上、イライザの側近くに行くことはできず、リリと共に、ララティナの塔、までは追い切れたものの、馬を駆っての移動には、着いて行く事ができず、結局、最後にリリの私邸を見張り、戻ってきたところで、このまま残るか、支所の方へ戻るべきか判断がつきかねていたのだ。

 リリが一緒であるならば、そう問題は無いだろう、と、思いつつも、リリが、イライザに余計な話をしないかが不安でもあった。

 昨晩の出来事、『転がる子豚亭』での時間、したたかに酒に酔い、軽い酩酊と共に過ごしたイライザは美しかった。

 酒の力が、ガブリエルとイライザの羞恥心を弱め、より、肉体の欲求の近く、言い換えれば、本能に沿った行動を起こすきっかけになっていた。

 イライザが、(あの時はイザベラだと思い込んでいたが)、よろけ、腰を抜かした。リリに、休ませるべきだと言われて、抱きかかえて階段を昇る。

 赤く染まった顔から、首筋、喉元にかけて、緩んだ襟から覗く肌も、薄桃に染まっていた。本来であれば、不躾に女性に対してそのような邪な視線は向けないはずが、あの時は、目が離せなかった。

 ゆるんだ襟元を凝視し、その下にある柔らかな身体を夢想しながら、ガブリエルは階段をゆっくり、一段一段踏みしめるように昇った。

 イライザの身体に触れていたかったからでは無い、自分の足元も危うく、万が一にもイライザに怪我をさせるわけにはいかなかったからだ。

 二階へ運び、イライザをベッドに横たえて、……そして、そして……。
< 94 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop