混戦クルーズ！ 造船王は求婚相手を逃さない

　玄関の方から、ざわめきが聞こえてくる、誰かが来たのだ、アレンが助かった、と、思い、扉を見ると、屋敷の使用人とおぼしき男性の静止を振りきって入ってきたのはガブリエルだった。

「マイケル？！　やっぱり君だったのか　アレン、イライザはどこにいる？」

　味方の登場、と、思ったものの、アレンは思いがけず背後から撃たれた気分になっていた。

「ああっ、ガブリエル、イライザは！」

　どうにかしてこいつを黙らせる方法は無いものかと考えても、今は時間が無さすぎる。

「リリと一緒にここに戻ってきたところまでは確認しているんだ、一緒では無いのか？」

　あああああ！！！　このッ、どあほおおおおおお！　と、声に出せないのがもどかしい。アレンは何とかガブリエルを黙らせたいと思ったものの、口から出てしまった言葉は戻せない。

　もし戻せるくらいなら、口へ押し込んでそのあと吐き出せないように二三回頭を揺すって下腹に膝蹴りを数発くらわせてもいい、むしろそうしたい、アレンは思いつつ、そうすることのできないものかしさに舌を打つ。

「何を言っている、イライザ嬢はホテルにいるのではないのか？」

　ガブリエルの登場に一瞬気を取られたものの、すぐに言葉の違和感に気づいたマイケルが主であるガブリエルを無視してアレンに尋ねた。

「ホテルだ！　いッ、イライザは、ホテルにいる！　あー、心配だっ、イライザの身に何かあったら」

　動揺のせいか、アレンは声を上ずらせながら言った。　

「何を言っている、イザ、イライザ嬢ならここに……」

　怪訝そうな顔をするガブリエルに、もうどうなってもいい、と、アレンが飛び蹴りをくらわせた時にはもう遅かった。マイケルは、状況判断に長けていて、ガブリエルは空気を読む事ができなかったのだ。

　きれいにアレンの飛び蹴りがガブリエルの背中に炸裂し、ガブリエルが前のめりに倒れこむと、同時に、マイケルがガブリエルの言わんとする事を理解した。