混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「ちょっとまて、イザベラ嬢がイライザ嬢? どういう事だ?」

「何でも無い! ガブリエルはちょっと、……そう! 二日酔いで混乱しているのだろう、多分」

「って、お前、うちの社長になんてことを!」

「すまん、今背中に毒虫がっ!」

「だからといって飛び蹴りは……、おい、ガブリエル、しっかりしろ!」

 あわててマイケルがガブリエルを抱き起こし、様子を見ているところで、アレンはそのどさくさに紛れて部屋を出た。

 扉の向こうで、マイケルが何か叫んでいるようにも思えたが、かまわずにアレンは邸内をイライザを探して回った。

 屋敷の中は、思っていたよりも人がいない。先ほど、マイケルの指示でホテルに向かった者達がいないせいかもしれないが、それにしても人の気配というものがしない。

 ともかく、と、階段を駆け上り、人の気配が無いか探りながら、アレンは廊下を歩き始めた。

 注意深く進んだとしても、アレンは何の訓練もしていない、いわば素人。

 静寂の中から、様子をうかがっている気配に気づく事は無かった。
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