ドッペル少年少女~生まれる前の物語~
プロローグ
風が吹く花畑の中心に、金色の髪を肩まで伸ばした少女が、花を編みながら歌っている。

「~♪」

少女が歌っていると、不意に視界が塞がれた。

「だーれだ?」

「クスッ……もー、サク?」

「あはは。残念、もう当たっちゃった!」

パッと手を離し、少女とそっくりな顔をした少年は、少女と同じように肩まで髪を伸ばしていた。

少年は少女の隣に座る。

「何してるの?サン」

「花冠を編んでるの!出来たらサクにあげるね」

サンとサク。

生まれた時―否、その前から共にいた双子。二人は他の双子よりも特別だった。

片方に何かあれば、予感のようなものを感じた。誰よりもお互いを理解し合える片割れ同士。

「ねぇ、サン。前世って知ってる?」

「んーと、生まれる前の自分だよね?」

サンは花を編みながら、乳母から聞いた絵本のお話を思い出す。

「そう。もし僕達に生まれる前があったなら、どんなだったかな?」

「んー。私は生まれる前も女の子で、サクと一緒だったらいいな!」

最後の一編みを終え、サンは笑う。

「僕も!サンと一緒だったらいいな!」

サクも笑うと、サンは出来上がった花冠をサクへと差し出す。サクは頭を少し下げて、花冠を被せて貰った。

「ちょっとよれちゃった……」

「僕が編むより、よっぽど上手だよ。ありがとう!」

サクはサンの頭を撫でてお礼を言う。すると、サンはホッとしたように胸を撫で下ろした。

「こうして見ると、サクは絵本に出てくる王子様みたい!」

「じゃあ、サンはお姫様だね!」

「「僕(私)達は、ずっと一緒!!」」

小指を絡めて指切りをする二人は、誰が見ても幸せに見えるだろう。

確かに幸せだった。子供だった二人は、ただ純粋にお互いを必要とし、双子として生まれたことを喜んだ。

恐らく、二人にとって一番幸せだった日々。男と女になる前の時間を、ほんの刹那の幻の中で過ごしていた。

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