ドッペル少年少女~生まれる前の物語~
生まれる前から一緒にいた、大切な片割れ。魂の半分を分けあった存在。

血の繋がった、たった一人の理解者。

そんな存在である彼女を、実の妹をサクは愛している。家族とはまた違う心で。

(……僕だって分かってるよ。おかしいって。だから、表に出すことないよう注意してきた)

血の繋がった兄妹、ましてや双子となれば、結ばれるなどある筈がない。そんな未来を夢見るほど、自分は愚かじゃないと、サクは言い聞かせる。

(僕はただ兄として、自分の片割れと接してる。なのに、気持ちを隠していても、一緒にいることは罪なのかな?)

人間は機械ではない。自分の感情をコントロール出来ないこともある。

けれども、サクは自分の心に鍵をかけた。彼女の側にいるために。

(僕達は、大人になっていく。そして、その度に傷つくんだ)

優しい妹。内気で人と話すのが苦手で、それでも笑顔が陽だまりのように暖かい。大好きな女の子。

最近は、笑った顔もほとんど見ていないなとサクは思う。

(僕は、多くは望まない。けれど、サンの笑顔を願っても良いでしょ?)

誰に尋ねるでもなく、サクは心の中で呟くと、人気の少ない廊下を歩いた。

< 3 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop