ドッペル少年少女~生まれる前の物語~
笑っていて
「あーもう!!」

「サ、サク?」

中庭に続く廊下を歩いていたサンは、後ろから腕を掴まれ、中庭の噴水の所へと連行された。

「何でサンとお話するのがいけないのかな?後ルーナ先生もサンに厳しすぎ!酷いよね!」

「それは、仕方ないわ。確かに私、あまり出来がよくないもの」

俯くサンに、サクは首を振る。

「違うよ。サンはやろうと思えば出来るんだ。さっきのダンスだって」

「見てたの?」

ダンスのレッスンのことを知っていたかのようなサクの口ぶりに、サンは顔を曇らす。

「たまたま見えちゃったんだ。わざとじゃないよ?」

サクはサンの表情が陰ったことに少し焦った。サンには笑っていてほしいのにと。

「……私ね。何やっても駄目で、お父様にもお母様にも見放されちゃうんじゃないかって不安なの。ルーナ先生にも呆れられてるし」

「僕あの人とフギル先生嫌い。あっちも僕のこと嫌いみたいだし。それに」

そこで言葉を切るとサクはサンを見つめる。どこか怒っているように顔をしかめて。

「いつも『それに比べてサン様は』なんて言って、サンのことを悪く言うところがほんとに嫌いだ。サンは太陽みたいにあったかい笑顔なのに」

サクという世界を照らしてくれる光。

「それは、大袈裟だわ。サクの方が太陽みたいだもの」

首を振るサンにサクは笑いかけると、その手を握る。小さい頃は同じ位だったのに、いつの間にか自分の手はサンよりも大きくなっていた。

「サンは太陽だよ。僕が言うんだ。間違いないよ。誰が君を否定しても、僕は君を否定しない」

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