青と雨
いただきます、といって私は具の端っこにフォークを付ける。



田淵の作った料理はいつ見ても何を作ってもおいしそうに見える。し、実際に美味しい。



「うまい。」



顔を上げずに呟くと、田淵が恥ずかしそうに笑ったのが視界の端に映った。



いつも同じことを言っているのに、田淵はいつも同じ反応をする。



どれだけ素っ気なくても、美味しい、と言ってくれると嬉しいらしい。



私にはよく分からないことだ。



「田淵、部屋いけるの。」



食べ終わった私がやっと顔を上げてそう言うと田淵は頭に疑問符を浮かべたかと思うと、すぐに何のことか分かったようにあぁ、と言った。



「無理だ。台風で直すに直せないし、なんせ天井だから直すのにも時間がかかるらしい。」



前の台風で雨漏りが発覚した田淵の家は、バケツとコップとたらいと同居状態らしい。



台風のおかげで雨漏りをしていることに気づけたのだが、結果的に良かったのか悪かったのか分からないような状態だ。

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