フラれた傷をえぐるヤツ
あたし以外の人にとっては、
たかが、フラれただけのこと。
学生だったらまだしも、あたしは社会人だ。
いつまでも引きずってるわけにいかなくて。
月曜日。
会社に行くだけ、あたしエライわ…。
顔は…ひどいけど。
仲のいい同僚は、あたしの顔を見て察して
くれた。
でも、察するどころか…
傷をえぐる奴がいた。
同じ課のヨシタカ。
いつも明るい、まさに営業マンの人懐っこさ。
普段なら、冗談の1つも交わしてから外回りに
行くのが日課だったけど。
あたしの顔見て…
何、絶句してんのよ?
い、いやぁ。見事だね。
まさか、フラれたとか?と、爽やかな笑顔で
笑った。
言い返せない自分が、にくい…。
まだ、そんな気力はない…。
黙っているあたしを、周りの同僚が
ハラハラして見てる空気感。
ヨシタカ…もういい。察してよ。
そう言うあたしに、なんとアイツは…
トウコ、ほんとにフラれたの!?
と、嬉しそうに笑った。
あたしを含め、周りが一斉に声を上げた。
はあ!?
ニコニコしてるヨシタカの顔が…
あたしには悪魔に見えたっけ。