【冴えない貴方は御曹司!?】番外編も完結しました!
Once upon a time there was a beautiful princess…
─今から30年程前のこの会社での出来事を、祐輔の母の思い出話と共にお送りしていくことにしましょうか─
さて昔話の始まり始まり…
─♢──♢──♢──♢──♢─
当時の私は、短大を卒業したばかりの右も左も分からない新入社員でした。
2か月の研修の後に、私のような一般事務職の社員は早くも配属となるのですが、何と私は受付となってしまって…。
あまり社交的とは言えない性格の私なのに、どこまでやって行けるのかと心配しましたが、真面目で美しい2年上の先輩が、こんな私を見捨てることなく、手取り足取り親切に教えてくれたのです。
その先輩の名前は橘麻衣子さんで、彼女も短大卒で受付となったそうで、他の全ての美しい先輩達がフツーに見えてしまうくらいの、今まで私が会ったことのないレベルの美人さんなのです。
だから、社内外問わずに想いを寄せる人達が、代わる代わる受付にやって来ては彼女に話し掛けて、世間話に花を咲かせている状態でした。
しかし、それを良しとしない勢力が現れたのです。
上司にあることないこと伝えたのは、橘さんと同期の人が一人と、その1年上と2年上も一人ずつの3人組でした。
橘さんは否定していましたが、上司はもうその3人のフツーの美人に丸め込まれていて、聞く耳を持っていません。
諦めたような表情の橘さんが、分かりました、と言って、退職させて頂きますと上司に告げると、それを聞いて喜びを露わにした3人組は、してやったりの表情を見せて、厭らしい笑いを浮かべていました。
当時の総務部のトップは、この会社の御曹司で、まあ現社長で今では私の夫ですが、受付を統轄する課長から提出された橘さんの退職願を見て、どう言うことだと受付の課長に問い質したのです。
するとフツーの美人の3人組に上手く丸め込まれているその課長が、そちら側の主張のみを述べて終わりです。
『橘さんはどう言っているんだ』
すると課長は、彼女は事実と認めたから退職願を出したんだと言いました。
思わずエエっと声を上げる私に総務部長の現社長は、何があったのか話してくれないかと、別室に連れて行かれ、私の見聞きしたことの詳細を話すよう指示されます。
そして私の次に部屋へ通されたのは、悲しそうな顔をした橘さんです。
総務部長(現社長)がわざわざ彼女を迎えに来て、肩を抱き寄せてポンとひとつ叩きます。
きっと、彼は任せておけと橘さんに意思表示したのでしょう。
何だかとてもお似合いな二人は、もしかして…と考えて、何とも言えないもやもやでいっぱいになった記憶があります。
実際には、橘さんとあの人は付き合っている話もなかったのですが、あの人が橘さんに片想いしているのではないかと言うことに思い至りました。
だって、あの人の視線を辿ると、いつも橘さんがいましたから。
今思い出しても、ちょっと複雑ですよ、本当はね。
でも、あれだけの美人だったので、普通は同性からのやっかみなんかで大変ではないかなと思ったのですが、男性だけではなく、女性からも好かれていたはずです。
まあ、あの部署を異動させられた例の3人組のように、表立って何かをしでかす人も珍しいでしょうけれど。
さて昔話の始まり始まり…
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当時の私は、短大を卒業したばかりの右も左も分からない新入社員でした。
2か月の研修の後に、私のような一般事務職の社員は早くも配属となるのですが、何と私は受付となってしまって…。
あまり社交的とは言えない性格の私なのに、どこまでやって行けるのかと心配しましたが、真面目で美しい2年上の先輩が、こんな私を見捨てることなく、手取り足取り親切に教えてくれたのです。
その先輩の名前は橘麻衣子さんで、彼女も短大卒で受付となったそうで、他の全ての美しい先輩達がフツーに見えてしまうくらいの、今まで私が会ったことのないレベルの美人さんなのです。
だから、社内外問わずに想いを寄せる人達が、代わる代わる受付にやって来ては彼女に話し掛けて、世間話に花を咲かせている状態でした。
しかし、それを良しとしない勢力が現れたのです。
上司にあることないこと伝えたのは、橘さんと同期の人が一人と、その1年上と2年上も一人ずつの3人組でした。
橘さんは否定していましたが、上司はもうその3人のフツーの美人に丸め込まれていて、聞く耳を持っていません。
諦めたような表情の橘さんが、分かりました、と言って、退職させて頂きますと上司に告げると、それを聞いて喜びを露わにした3人組は、してやったりの表情を見せて、厭らしい笑いを浮かべていました。
当時の総務部のトップは、この会社の御曹司で、まあ現社長で今では私の夫ですが、受付を統轄する課長から提出された橘さんの退職願を見て、どう言うことだと受付の課長に問い質したのです。
するとフツーの美人の3人組に上手く丸め込まれているその課長が、そちら側の主張のみを述べて終わりです。
『橘さんはどう言っているんだ』
すると課長は、彼女は事実と認めたから退職願を出したんだと言いました。
思わずエエっと声を上げる私に総務部長の現社長は、何があったのか話してくれないかと、別室に連れて行かれ、私の見聞きしたことの詳細を話すよう指示されます。
そして私の次に部屋へ通されたのは、悲しそうな顔をした橘さんです。
総務部長(現社長)がわざわざ彼女を迎えに来て、肩を抱き寄せてポンとひとつ叩きます。
きっと、彼は任せておけと橘さんに意思表示したのでしょう。
何だかとてもお似合いな二人は、もしかして…と考えて、何とも言えないもやもやでいっぱいになった記憶があります。
実際には、橘さんとあの人は付き合っている話もなかったのですが、あの人が橘さんに片想いしているのではないかと言うことに思い至りました。
だって、あの人の視線を辿ると、いつも橘さんがいましたから。
今思い出しても、ちょっと複雑ですよ、本当はね。
でも、あれだけの美人だったので、普通は同性からのやっかみなんかで大変ではないかなと思ったのですが、男性だけではなく、女性からも好かれていたはずです。
まあ、あの部署を異動させられた例の3人組のように、表立って何かをしでかす人も珍しいでしょうけれど。