東雲天音の欠片(番外編)

アマネの本

俺がこれから話すのは、アマネが書いた本の一部。あいつが、二度と得られないと思っていたものを、再びその手に得るまでの話だ。

アマネの過去を聞き、フランツがフランスに帰って早一ヶ月。

相変わらずペット探しやら何やら、雑用のような依頼が多い。一見すれば穏やかで変わりない日々。

けれど、俺は悩んでいた。何故か聞きたいか？聞きたくなくても勝手に話すけど、俺あいつに直接好きだと言われてないんだよ。

ついでに言うなら、俺もはっきりあいつに自分の気持ち言ってないんだよ。

もうほら、取り敢えず言わなくても何となく分かってるかなみたいにさ、お互い思っちゃってるから。

でも、そのせいかは分からないけど、俺とあいつの関係は未だに変わってないと言えるだろう。

何時ものように、事件の時はお互いの役割をこなしているだけだ。……何が言いたいかと言うと、普通の恋人みたいなこと、何一つやってないってことだな。

ほら……あれだ、読んでたやつは分かると思うけど、俺が嫉妬で一回アマネに………その、あれをあれしたからさ、それ以来何もしてないし。

あのさ、もしかして俺ってヘタレ？ってやつなのか？？

いや、そんなことはない。……とは言えないから頭を抱えている。

長い前置きはともかく、俺はアマネに改めて気持ちを伝えようと思う。