東雲天音の欠片(番外編)
暫くして、グロー婦人が戻ってきた。アマネの姿が見えないが。

「あの、アマネは?」

「え?あ!……何してるのよアマネちゃん!」

グロー婦人は後ろを振り返り、柱へと歩いていく。そして、誰かを引っ張り出し、俺の前に連れてきた。

「………」

真っ赤というほどではないが、綺麗な赤色のドレスに、銀色のネックレス、白い手袋を身に付けたアマネが、落ち着き無さそうに視線をさ迷わせている。

顔も少し赤く、左手をピアスへと伸ばして摘まんでいた。

………言っていいかな?

すっげー可愛いんだけど!いや、可愛いというより綺麗だよな。

「ちょっと、おめかしした女の子に何か気の利いたこと言ってあげなさい!」

肘で俺の溝内をグロー婦人がどつく。いや、マジで痛いんですけど!

「ふぐっ!………良く似合ってるぞ」

「………そう、ですか」

何だろう。何なんだろうこの気まずさと言うか、甘酸っぱさ。

俺達はお互いに視線を背ける。

「………いいわねー。若いって!ああ、せっかくだからバルコニーで愛を語らってらっしゃい!もし二人の邪魔をしようとするやからがでたら、私が全力でしょっぴいてやるわ!」

どっから手錠だしたんだよ!!てか、間違いなく警部の奥さんだなこの人。

「さぁ、あとのことは私に任せて!!お行きなさい!」

お行きなさいって……何か逃亡者みたいになってねぇ?

……でも、まぁいっか。それに、さっきからちらちらとアマネ見ている奴等がいるし。

俺はまだ居心地の悪そうなアマネの手を握って、バルコニーへと走る。

「ウ、ウィル?」

戸惑ったような表情のアマネに、俺は苦笑した。

「どうせここじゃ落ち着かないだろ。静かな所行こうぜ」

「……」

握った手を、アマネは控えめに握り返した。

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