君がいなくなったって【短編】
君がいなくなったって





>>ごめん、無理




めんどくさい、を取り繕うこともないこの短文に、あ、もう私達終わったな、と冷静に考える自分がいて、そこまで動揺していない、可愛げを失った自分にまた落ち込む。


そもそも。




>>来週、会えない?




会えると思ってなんかいなかった。

断られることを知っていて、それでもなにか理由が、キッカケが欲しかった。




>>そっか、じゃあいいや




久々にスタンプを送ってみる。
クマか手を振ってるスタンプ。これでなにか察してほしい。

なんてったって、友人時代を含めて10年の付き合いだ。


「こんなことなら、ずっと友達でいたほうが良かったのかも」


虚しい独り言。

会えないことが当たり前になっていて、悲しい、とか苦しい、とか、そういう気持ちはなかった。

そういう気持ちがなかったことが辛かった。

だから、これでいいんだよ、きっと。


携帯の電源を落とす。

返事なんてどうせ返ってこないけど、いつまでも光らない携帯を見るのもそれはそれで辛くて枕に顔を埋める。

ハッキリと存在は思い出せるのに、顔や声はもうボンヤリと霧がかかったように思い出せない。

それでも付き合ってるっていうんだから笑うしかない。


「ヒロ………」


小さく呟いてみる。
けれど、虚しさを痛感するだけだった。
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