二度とない、もう一度。
変わり目。
朝起きると枕に涙の跡がある時がある。
「またあの夢か…」
両親を亡くしてから何度も見る夢。
夢の中では俺は何度も叫ぶんだ。
置いてかないでって。
リビングへ行くと朝食にパンとコーヒーを用意した。
そろそろ起きてくるかな…
と思ったと同時に慌ただしく扉を開ける音が聞こえる。
「やばいー寝坊した!」
「おはよう、香織」
妻である香織は低血圧のせいか朝が弱く
毎朝慌ただしく準備をしている。
「これ朝ごはん」
「えーいらないよ!いってきます!」
用意しておいた朝ごはんには目もくれず家を出ていく。
これもいつものこと。
それなのに俺は懲りずに朝ごはんを用意する。
いつかまた、昔のように二人で朝ごはんを食べられる日が来るんじゃないかってどこかで期待しているんだ。
「……陽菜、なにしてっかな」
教え子でもある陽菜に告白された時
涙流しながら好きだという陽菜が可愛くて
その場の雰囲気に流されてキスをしてしまった
あいつはそれでもいいって言うけど
そんなの絶対間違ってるんだ…
学校頑張ってるか
と、陽菜にラインを送信。
五分後、陽菜からの返信が来た。
【風邪で休んでます】
か、風邪…?
あいつ本当バカだな。
なにしてんだか。
ちゃんと飯食ってんのかな。
ただでさえ痩せてんのに…
「あーくそ!」
しょうがねえ、見に行くか。