二度とない、もう一度。



二限目が終わる頃、天気が悪くなった。




「やっぱりかなり降りそうだね〜」




真奈美が窓から空を見上げて言う。

朝はあんなにも青空が広がっていたのに
今はもう暗い色をした雲が広がっている。





「はーい席につけー」




担任の木村が教卓の前に立つ。




「大雨洪水警報が出たため、今日はみんな帰ることになった。部活動もないからな。その代わり家でしっかり勉強するんだぞ」




クラス内が歓喜で騒がしくなる中、

真奈美はソワソワしていた。




「真奈美、どうしたの?」

「城島先輩が傘もってくるの忘れたって噂になってんの!!」

「それがどうしたの?」

「ばか!先輩に誰が傘を貸せるか!争奪戦!」

「争奪戦なの?それ…」

「いいの!!!!!じゃあ私、先輩のところ行くから!病み上がりなんだし、遥斗と一緒に帰んなよ!」





言うだけ言ってそそくさと教室を出ていってしまった。



でも、嬉しそうだったな。

……良かった。




遥斗の教室を除くと友達とまだ話していた。
邪魔しちゃ悪いと思い、そのまま昇降口へ向かう。




「わ……すごい雨…」




雨の匂い。
風の音。




あの日ーーーーーーー


お母さん達が亡くなった日も、こんな雨だった…






胸が苦しくなり傘もささず飛び出した。





考えないようにって何度しても
何かの拍子に思い出す。




「ーーーーーー陽菜!」





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