二度とない、もう一度。
塾から家までは車で15分ほど。
あっという間のこの時間に、いつもできるだけたくさんの話をする。
基本は勉強のことだけど…。
「おばさん達最近は来てるのか?」
「…ううん、来てない」
「そっか」
おばさん達ーーーー
それは、私を育ててくれている義理のお母さんたちのこと。
育ててくれているといっても
高校に入ってからは別々で、借りてくれたアパートに一人で住んでいる。
「…寂しく、ないか?」
「あはは…もう大丈夫だよ」
家に帰っても真っ暗なのは寂しいけど
塾があれば先生に会えるから。
お母さんとお父さんが亡くなったのは、私が小学生六年生のとき。
飲酒運転をしていた車が二人に突撃した事故だった。
突然家族を奪われた苦しみ、悲しみから自暴自棄になりそうな私に、先生は"勉強"という逃げ道を与えてくれた。
そして中学受験に成功し、そばで支えてくれた先生を好きになった。
先生の優しい笑顔が……私をおかしくするの。
「ついたぞ」
「ありがとうございます」
「またな、陽菜」
先生ーーーーーーーー、好きーーー…