二度とない、もう一度。
「そうだ!!!あたし気になる人できたんだよね」
「気になる人!?だれだれ!」
まさか真奈美がそんなこと言い出すとは思わなかった。
中学時代は全然恋愛なんてしてなさそうだったし…。
でも高校に入ってから見た目も可愛らしくなった気がする。
「三年の城島健(じょうじまたける)先輩!」
「城島先輩かよ。競争率たけえぞ」
城島先輩はサッカー部のエースでありキャプテン。
遥斗もサッカー部だからよく知っているみたいだけど、私はあまり知らない人だ。
かっこいいって騒がれていることは知っているけど。
「二人はいないの〜?そういうひと!」
キラキラした瞳で私たち二人を見る真奈美。
「私はいないよ」
嘘をついた。
みんなにはまだ言えない…。
「俺は……気になるヤツならいる…かな」
「「うそお!?」」
遥斗の突然の台詞に思わず身体を乗り出してしまった。
「だれだれだれ!」
「ちょ、真奈美うぜえよ」
「教えてよ!」
「うるせえなー」
シッシッと真奈美を払い除けると食べ終わったお弁当箱を持って「じゃー先戻るわ」行ってしまった。
「ちぇ」
「真奈美…遥斗も言いたくないことくらいあるんだから」
「でーもー…」
「それよりさ、真奈美の好きな人の話聞かせてよ!」
「ちょ、まだ気になってるだけだしー!」
私にも言えないことがある。
10歳年上で、塾講師。
きっと引かれるに違いない。
だからまだ、この恋は私だけが知っていればいい。