ドS上司の意外な一面

act:意外な優しさ(小野寺目線2)

***

「あっきゅん、どこのレストランを予約してくれたの?」

 一ヶ月前にゲットした彼女が聞いてくる。可愛いんだけど束縛虫がウザいんだよな――

「もうすぐ着くからさ」

 そう言って目の前の横断歩道の先を見ると、見たことのある二人が手を繋いで必死に走っていた。何だか切羽詰った勢いで走ってるな、仕事でトラブったのか!?

 遠目から見ても分かるくらい、二人揃って顔が赤い。走っているから……ではないだろう。

「ふーん」

 このまま二人で、ホテルまで走って行っちゃう? 鎌田先輩のキャラはそういうのじゃないから、きっと無理だろうなぁ。

 ちょっと前まではふたりは犬猿の仲だったハズなのに、一体何があったんだろうか。さっきまで社内では見ている限り、何もなかったよな。考えられるのは社外でってことだね。

 一緒に仕事をしたときの、鎌田先輩のネチネチ口撃を思い出す。仕事も恋も両方を手に入れようなんて、絶対にさせてたまるか。

「ねぇあっきゅん、どこ見てるの? さては可愛いコでも見つけたんでしょう?」

 そう言って彼女が俺の頬っぺたを、ぎゅっと思いきり引っ張ってきた。

「会社の先輩がいたんだよ。ほらキレると怖いって噂のカマキリが、女と手を繋いで走ってたの」

「ふぅん」

 同じ会社だが部署が違うので、予想通り興味まったくなしですか。……別にいいけどね。それより明日、何があったか聞いてみよう。今日の自分の展開よりも、非常に気になるね。
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