ドS上司の意外な一面
act:意外な展開4
***

 ここ最近の忙しさの理由は、明後日に控えている重役会議のせいだった。部署が一丸となって頑張ってきたプロジェクトが、認められるか否か緊張感いっぱいでみんな仕事をしている。

 私のくだらない妄想でプロジェクトの足を引っ張ってしまったら、鎌田先輩に迷惑がかかってしまう。それだけは避けたかったから尚更、気を引き締めて仕事をしていた。

 鎌田先輩も昨日同様に、さくさくと仕事をこなしているようにみえる。

「それが一段落してからでいいので、他の部署の女子社員を何名か集めて、小会議室にお茶の用意をしておいて下さい」

 パソコン画面を見つめたまま、鎌田先輩が指示を出す。明後日の会議の前に問題点がないか、最終的な打ち合わせをするためだろうな。

「わかりました!」

 少しでもいいから鎌田先輩の力になりたい。今は自分のできる事を、どんなことでも精一杯しよう。

「一段落つきそうになかったら何か手伝うよ? 大丈夫?」

 隣で小野寺先輩が貴公子のような爽やかな笑みを浮かべ、声をかけてきた。

「だってあれもこれもって、ひとりで大変じゃないか」

「大変なのはみんな同じですから、だいじょ――」

「できることが分かっているので、俺は頼んでいるんです。彼女を甘やかさないでいただきたい!」

 キッと小野寺先輩を睨み、少し大きな声で会話に割り込んできた鎌田先輩。そんなコワイ鎌田先輩の視線を直に受けてもまったく動じずに、まぁまぁというジェスチャーをした小野寺先輩もある意味すごいかもしれない。

「山本さんが大変そうだったから、声をかけただけです。すみませんでした」

 小野寺先輩が漂々とした感じで言う。完全に謝っている態度じゃない――しかもなぜかふたり、じーっと睨み合っているとか……。

 もともとソリの合わないふたりだと思っていたけれど、昨日から態度でそれを表しているのが見てとれた。何があったか分からないけどとにかく、私を巻き込まないで欲しい。

 見えない火花を散らし合うふたりの様子を横目で見ながら、体を小さくして仕事をしたのだった。
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