ドS上司の意外な一面
act:意外な展開5
***
会議は十三時から始まった。部署総勢五十名あまり、全員で会議に臨む。
私がいるのは末席、鎌田先輩は上座側にいる。そしてなぜか私の隣には、小野寺先輩がいた。
「俺には発言権、まーったくないしね。ここにいても会議には支障ないんだよ」
とか何とか言って、ちゃっかり隣を陣取ったのである。
前にいる鎌田先輩が立ち上がり、ホワイトボードに向かって皆に分かりやすく説明に入った。途中容赦なく入る質問にも、明朗な態度で的確に答えていく。その鮮やかな仕事ぶりを遠くから見つめるだけで、心拍数が勝手に上昇した。
(鎌田先輩、本当にカッコイイ――)
「……ちょっと、ガン見しすぎじゃない?」
隣にいる小野寺先輩が、口元を押さえながらコソッと呟く。
「あんなヤツの、どこがいいのさ?」
言いながら机の下にある私の左手に、小野寺先輩の空いた手を被せてきた。反射的に引っ込めようとしたけど強い力で握られてしまい、簡単に捕らえられた。
驚いて小野寺先輩の顔を見るが私とは目を合わせず、前方にいる鎌田先輩を見たまま固まる。
「……離して下さい」
強い口調で言ったのに、無視し続ける小野寺先輩。それどころか指を絡めてきて、ガッチリ逃げられないように確保されてしまう始末。
(ああ、どうしよう……)
「君自身に何かあっても、鎌田先輩は飛んでこないよ。こーんなに距離があるんだからさ!」
鎌田先輩から私に視線を移して、覗き込むように見つめられる。
どうにも困ってしまって鎌田先輩に視線を投げかけてみたら、ホワイトボードからこっちへとちょうど顔を向けた時で、視線が一瞬だけ重なったように感じた。
次の瞬間、鎌田先輩の顔色がみるみる内に陶磁器のように白くなる。
「小野寺先輩……止めて下さいっ」
もう一度、強く言ってみた。
「悪いけど鎌田先輩の様子を、もう少し堪能してからね」
一重瞼を細めてどこか悪びれた表情を浮かべたまま、さも面白そうに告げて、また鎌田先輩に視線を戻す。
助けを求めようにも鎌田先輩の位置は遠すぎて、やるせなさに胸が痛んでしまった。しかも小野寺先輩は私が嫌がっているのを分かっていながら、この状態をキープするし……。
しょうがないので俯いて、この気持ちをやり過ごすことに専念したのだった。
会議は十三時から始まった。部署総勢五十名あまり、全員で会議に臨む。
私がいるのは末席、鎌田先輩は上座側にいる。そしてなぜか私の隣には、小野寺先輩がいた。
「俺には発言権、まーったくないしね。ここにいても会議には支障ないんだよ」
とか何とか言って、ちゃっかり隣を陣取ったのである。
前にいる鎌田先輩が立ち上がり、ホワイトボードに向かって皆に分かりやすく説明に入った。途中容赦なく入る質問にも、明朗な態度で的確に答えていく。その鮮やかな仕事ぶりを遠くから見つめるだけで、心拍数が勝手に上昇した。
(鎌田先輩、本当にカッコイイ――)
「……ちょっと、ガン見しすぎじゃない?」
隣にいる小野寺先輩が、口元を押さえながらコソッと呟く。
「あんなヤツの、どこがいいのさ?」
言いながら机の下にある私の左手に、小野寺先輩の空いた手を被せてきた。反射的に引っ込めようとしたけど強い力で握られてしまい、簡単に捕らえられた。
驚いて小野寺先輩の顔を見るが私とは目を合わせず、前方にいる鎌田先輩を見たまま固まる。
「……離して下さい」
強い口調で言ったのに、無視し続ける小野寺先輩。それどころか指を絡めてきて、ガッチリ逃げられないように確保されてしまう始末。
(ああ、どうしよう……)
「君自身に何かあっても、鎌田先輩は飛んでこないよ。こーんなに距離があるんだからさ!」
鎌田先輩から私に視線を移して、覗き込むように見つめられる。
どうにも困ってしまって鎌田先輩に視線を投げかけてみたら、ホワイトボードからこっちへとちょうど顔を向けた時で、視線が一瞬だけ重なったように感じた。
次の瞬間、鎌田先輩の顔色がみるみる内に陶磁器のように白くなる。
「小野寺先輩……止めて下さいっ」
もう一度、強く言ってみた。
「悪いけど鎌田先輩の様子を、もう少し堪能してからね」
一重瞼を細めてどこか悪びれた表情を浮かべたまま、さも面白そうに告げて、また鎌田先輩に視線を戻す。
助けを求めようにも鎌田先輩の位置は遠すぎて、やるせなさに胸が痛んでしまった。しかも小野寺先輩は私が嫌がっているのを分かっていながら、この状態をキープするし……。
しょうがないので俯いて、この気持ちをやり過ごすことに専念したのだった。