ドS上司の意外な一面
act:意外な展開(鎌田目線5)
***
彼女に告白する大事な日、思いきって有給をとり朝から作詞していた。
メロディラインはけん坊が担当してくれたモノがあったので、それに載せることにしていたのだが、いろいろと想いが詰まってしまって上手く歌詞が書けなかった。
こんなところにまで不器用な自分が現れる。伝えたいのに、伝えられないもどかしさ――結局一番しか作る事ができないまま、急いでライブハウスに向かった。
到着して早々メンバーに大事な話があるからと早めに呼び出していたのに、俺が一番出遅れて会場入りした。控え室に入ると、何故かみんながニヤニヤしながら顔を見つめる。
妙な雰囲気を感じて不審な顔した俺に、けん坊が開口一番口を開く。
「やっと……やっと、この日が来たんだな!」
嬉しそうに言って、ぎゅっと躰を抱きしめてきた。
「まさやんの顔を見た瞬間、全て悟ったよ! ついに告白する気になったんだな?」
「それでいつやるの? どうやって告るの?」
「何だか俺まで、緊張してきちゃったっすよ」
なんてそれぞれ口々に感想を述べる。どうして人の顔を見ただけで、それをすることが分かってしまったのだろう?
訝しく思いながらも、彼女がやってきたら拳を突き上げてピースサインするから、曲を適当に終わらせてくれと打ち合わせした。
ライブの最中、観客の中にいるであろう君を必死になって捜す――気がおかしくなりそうな気持ちを何とか隠しながら歌うのは、思っている以上に至難の業だった。
「上司命令です」
何て言って君を無理やり縛り付けなければ、ここに来ないのではないかと不安になった。自分に自信がないわけじゃない、ただ傷つくのが怖い――それだけなのだ。
何曲目だっただろう、君が現れたのは……。恐るおそるといった様子で、中に入ってきた。
目が合った時の彼女は、何だか淋しげで一瞬不安に駆られる。
そんな不安を打ち消すように拳を高く突き上げて、メンバーに見えるようにピースサインをした。曲が終わっていくのを聞きながら、自分の心の中をしっかりと見つめ直す。
「俺、彼女に告白したよ」
何の躊躇いもなく、堂々と言える小野寺に嫉妬した。何もできない自分が、すごく腹立たしく思えた。
でも今なら言える――こんなに臆病な俺を君が変えてくれた。メンバーのみんなも、そんな俺を応援している。葉の上に溜まっていた不安という名の朝露が、ポロッと落ちていった。
そのお陰で気持ちを最大限に籠めて、彼女の前で歌うことができたのに――彼女が泣きながら飛び出していったのを確認したのは、歌い終わって間もなくのことだった。
彼女に告白する大事な日、思いきって有給をとり朝から作詞していた。
メロディラインはけん坊が担当してくれたモノがあったので、それに載せることにしていたのだが、いろいろと想いが詰まってしまって上手く歌詞が書けなかった。
こんなところにまで不器用な自分が現れる。伝えたいのに、伝えられないもどかしさ――結局一番しか作る事ができないまま、急いでライブハウスに向かった。
到着して早々メンバーに大事な話があるからと早めに呼び出していたのに、俺が一番出遅れて会場入りした。控え室に入ると、何故かみんながニヤニヤしながら顔を見つめる。
妙な雰囲気を感じて不審な顔した俺に、けん坊が開口一番口を開く。
「やっと……やっと、この日が来たんだな!」
嬉しそうに言って、ぎゅっと躰を抱きしめてきた。
「まさやんの顔を見た瞬間、全て悟ったよ! ついに告白する気になったんだな?」
「それでいつやるの? どうやって告るの?」
「何だか俺まで、緊張してきちゃったっすよ」
なんてそれぞれ口々に感想を述べる。どうして人の顔を見ただけで、それをすることが分かってしまったのだろう?
訝しく思いながらも、彼女がやってきたら拳を突き上げてピースサインするから、曲を適当に終わらせてくれと打ち合わせした。
ライブの最中、観客の中にいるであろう君を必死になって捜す――気がおかしくなりそうな気持ちを何とか隠しながら歌うのは、思っている以上に至難の業だった。
「上司命令です」
何て言って君を無理やり縛り付けなければ、ここに来ないのではないかと不安になった。自分に自信がないわけじゃない、ただ傷つくのが怖い――それだけなのだ。
何曲目だっただろう、君が現れたのは……。恐るおそるといった様子で、中に入ってきた。
目が合った時の彼女は、何だか淋しげで一瞬不安に駆られる。
そんな不安を打ち消すように拳を高く突き上げて、メンバーに見えるようにピースサインをした。曲が終わっていくのを聞きながら、自分の心の中をしっかりと見つめ直す。
「俺、彼女に告白したよ」
何の躊躇いもなく、堂々と言える小野寺に嫉妬した。何もできない自分が、すごく腹立たしく思えた。
でも今なら言える――こんなに臆病な俺を君が変えてくれた。メンバーのみんなも、そんな俺を応援している。葉の上に溜まっていた不安という名の朝露が、ポロッと落ちていった。
そのお陰で気持ちを最大限に籠めて、彼女の前で歌うことができたのに――彼女が泣きながら飛び出していったのを確認したのは、歌い終わって間もなくのことだった。