ドS上司の意外な一面
act:意外な一面2
***

 聞きなれたスマホの目覚ましの音で、やっと目が覚めた。いつものように頭上に手をやり探す。すると、何か硬いものに触れた。

 不思議に思って目を開けると、鎌田先輩の頭に手が触れていた。しかも顔がすぐ傍にある状態に驚いて、心臓が一気に駆け出していく。

「おはようございます」

「お、おはようございます」

 何だか恥ずかしくなって布団の中に、いそいそ隠れてしまった。

「よく眠れたみたいですね」

 布団の外で声がする。

「はぃ……。しっかり寝てしまったみたいで」

「そんなに、よかったですか?」

「へっ!?」

 そんなコト、答えられるわけないじゃない。

 照れる私に多分笑っている様子で、いきなり布団をめくる鎌田先輩。びっくりしていると、膝裏に腕を回し軽々と横抱きにして、どこかに向かう。

「あの、鎌田先輩?」

「さっさとシャワー浴びて支度しないと、会社に間に合わなくなります」

「自分で歩けますよ」

「昨夜腰が砕けていた人が、よく言いますね」

 ニヤリと笑って、まじまじと顔を覗き込んできた。朝から刺激が強すぎて、頭が沸騰しそう。

 バスルームの扉を開け、私を中に入れてくれる。

「ベッド以外での愛し方を教えてあげますよ」

「ちょちょちょ、あの時間がないですよ。しかも今日は鎌田先輩にとって、大事な重役会議があるじゃないですかっ!」

「重役会議よりも、こっちの方が一大事です。出来の悪い部下を躾けるのは、上司の務めですから」

「朝からちょっと刺激が強すぎて、頭も体が持たな――」

 苦情もあっさりとくちづけで封じられてしまった。パタンと扉が閉ざされた瞬間、シャワーの音が耳に聞こえる。

 そしてふたり揃って、遅刻ギリギリで出社したのは言うまでもない。
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