ドS上司の意外な一面
act:意外な優しさ2
***
(カマキリに何としてでも、一泡吹かせてやる!)
ぼんやりした頭をしっかり刺激すべく熱いコーヒー片手に、サクサク書類を作り上げた。朝から全力で頑張った。勿論それは時間が余るくらいの余裕ぶりで、目の前のデスクにいるカマキリに胸を張って書類を提出してやった!
(――よし、この勢いで次の仕事もやっつけちゃおっと)
「朝から、よく頑張ってたみたいだね」
いそいそと不要な書類を片付けていたら、隣で仕事をしている小野寺先輩に声をかけられた。
「実は昨日仕上げなきゃいけない書類を、今日になって急いで片付けていただけなんです」
肩を竦めながら言ったら、プッと苦笑いされてしまった。
「俺も君が来る前に、こってりと鎌田先輩にやられたもんなぁ。交代出来て、良かった良かった」
同じように肩を竦めて、小さな声で言う。
「それよりも君の仕事ぶりの良さとは正反対になってる本日の鎌田先輩に、何かアドバイスでもしてあげたら?」
「えっ?」
「パッと見はいつも通りに見えるんだけどさ、時々フリーズしたままになっているだよな」
「固まったまま、動かなくなっているんですか?」
「そうそう。何ていうか映像に出てる人を、一時停止ボタンで動きを止めた感じでさ。ま、固まっても長くて20秒くらいだけど、いつもより効率が悪いだろうね。あの人、大事な案件かかえているし、色々考えることがあるのかも」
腕組みをしながら、斜め前の鎌田先輩を見やる。
「そういう小野寺先輩は、仕事をしなくていいんですか?」
「後輩に仕事のことを心配される、俺って一体。大丈夫、午後から会議に使う書類の確認をしっかりしながら、本日の記念日に向けていろいろ考えてるんだ」
仕事の合間に? 小野寺先輩ってば器用だな。
「今日は彼女と付き合って、一ヶ月記念日なんだよ。俺ってばギター弾けるからさ、作詞作曲して彼女に捧げる歌を作っててさぁ。男は恋をすると詩人になるのかも」
白い眼で見ているのにも関わらず聞いてもいないことを、得意げに次々と話し出していく。正直なところ私としては、次の仕事がしたい。
ゴホゴホゴホッ!!
「鎌田先輩っ!?」
突然、鎌田先輩が激しく咳き込んだ。
心配になってデスクに回りこんでみると、目の前が白い何かでいきなり覆われた。よく見たらそれはさっきの書類で、鎌田先輩が突きつけたみたい。
恐るおそるそれを手にして窺うように鎌田先輩の顔を見たら、ちょっとだけ涙目で何気に苦しそうな表情を浮かべていた。
「あの、大丈夫ですか?」
「飲み物が、少しだけ気道に入っただけです。心配いりません」
「……はぁ」
何だ、心配して損しちゃったかも。
そんなことを思っていたら持っている書類の上の部分に指を差し、ギロリと睨んでくる。涙目のままなのであまり怖くはなかったけれど、何かを指摘されるのは今までの経験上分かっていたので、体を小さくして小言に備えた。
「それよりもここ、間違っています。見ている資料が違うのかもしれませんので、きちんと確認してきて下さい」
「分かりました、資料室に行ってきます」
あーあ、またしても完璧に仕事をこなせなかった。ドジっちゃった――
しょんぼりしながら肩を落として、資料室に向かったのだった。
(カマキリに何としてでも、一泡吹かせてやる!)
ぼんやりした頭をしっかり刺激すべく熱いコーヒー片手に、サクサク書類を作り上げた。朝から全力で頑張った。勿論それは時間が余るくらいの余裕ぶりで、目の前のデスクにいるカマキリに胸を張って書類を提出してやった!
(――よし、この勢いで次の仕事もやっつけちゃおっと)
「朝から、よく頑張ってたみたいだね」
いそいそと不要な書類を片付けていたら、隣で仕事をしている小野寺先輩に声をかけられた。
「実は昨日仕上げなきゃいけない書類を、今日になって急いで片付けていただけなんです」
肩を竦めながら言ったら、プッと苦笑いされてしまった。
「俺も君が来る前に、こってりと鎌田先輩にやられたもんなぁ。交代出来て、良かった良かった」
同じように肩を竦めて、小さな声で言う。
「それよりも君の仕事ぶりの良さとは正反対になってる本日の鎌田先輩に、何かアドバイスでもしてあげたら?」
「えっ?」
「パッと見はいつも通りに見えるんだけどさ、時々フリーズしたままになっているだよな」
「固まったまま、動かなくなっているんですか?」
「そうそう。何ていうか映像に出てる人を、一時停止ボタンで動きを止めた感じでさ。ま、固まっても長くて20秒くらいだけど、いつもより効率が悪いだろうね。あの人、大事な案件かかえているし、色々考えることがあるのかも」
腕組みをしながら、斜め前の鎌田先輩を見やる。
「そういう小野寺先輩は、仕事をしなくていいんですか?」
「後輩に仕事のことを心配される、俺って一体。大丈夫、午後から会議に使う書類の確認をしっかりしながら、本日の記念日に向けていろいろ考えてるんだ」
仕事の合間に? 小野寺先輩ってば器用だな。
「今日は彼女と付き合って、一ヶ月記念日なんだよ。俺ってばギター弾けるからさ、作詞作曲して彼女に捧げる歌を作っててさぁ。男は恋をすると詩人になるのかも」
白い眼で見ているのにも関わらず聞いてもいないことを、得意げに次々と話し出していく。正直なところ私としては、次の仕事がしたい。
ゴホゴホゴホッ!!
「鎌田先輩っ!?」
突然、鎌田先輩が激しく咳き込んだ。
心配になってデスクに回りこんでみると、目の前が白い何かでいきなり覆われた。よく見たらそれはさっきの書類で、鎌田先輩が突きつけたみたい。
恐るおそるそれを手にして窺うように鎌田先輩の顔を見たら、ちょっとだけ涙目で何気に苦しそうな表情を浮かべていた。
「あの、大丈夫ですか?」
「飲み物が、少しだけ気道に入っただけです。心配いりません」
「……はぁ」
何だ、心配して損しちゃったかも。
そんなことを思っていたら持っている書類の上の部分に指を差し、ギロリと睨んでくる。涙目のままなのであまり怖くはなかったけれど、何かを指摘されるのは今までの経験上分かっていたので、体を小さくして小言に備えた。
「それよりもここ、間違っています。見ている資料が違うのかもしれませんので、きちんと確認してきて下さい」
「分かりました、資料室に行ってきます」
あーあ、またしても完璧に仕事をこなせなかった。ドジっちゃった――
しょんぼりしながら肩を落として、資料室に向かったのだった。