ドS上司の意外な一面
「正仁さん自身で私を満たして、中でたくさんイって欲しいとか、あなたの愛を私の中で、いっぱいぶちまけて下さい、とか?」

「さすが元バンドの作詞担当――私には、全然思いつきません」

 思いついたとしても、口に出してなんて言えない。

「上手く言えたら、ご褒美にあげますよ?」

 ええっ、今の言葉を言うの!? 恥ずかしすぎて、躊躇しちゃうんですけど。

 喉をゴクンと鳴らし口を開こうとするけど、想いが空回りしてなかなか言葉にならない。

「焦らしプレイですか? 俺をどれだけ悶々とさせれば、気が済むんでしょうか」

「違っ、そんなつもりじゃないです」

「今日の夕方、会社では言えたじゃないですか。挿れて下さいって懇願したクセに」

「それはっ! あんなトコで正仁さんがあんなことをやって、しかも途中人が来たりして混乱したというか」

 ますます赤面する私を正仁さんは軽々と横抱きし、寝室に強制連行していく。しかもリビングの電気を、きちんと消すことは忘れない。

「混乱じゃなく、興奮したの間違いでしょう。たまに違う場所でああいうのも、オツなものですよね」

 優しくベッドに寝かせると窓際に歩み寄り、カーテンを開ける。月明かりが真っ暗な寝室を、ほのかに明るく照らした。横たわる私に素早くのしかかり、オデコに優しくキスをしてくる正仁さん。

「今は恥ずかしすぎて言えないでしょうが、危機的状況に追い込めば、あっさり言えますよ」

「えっと……あの~」

「言えなきゃ、ご褒美はナシです」

 そして深く唇を合わせて、簡単に私の舌を絡めとる。正仁さんの上半身からは先ほど感じたよりも、体から熱が発せられていて、それだけでクラクラした。

 ――熱い夜……開幕です。
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