ドS上司の意外な一面
act:意外な優しさ(鎌田目線2)
***
あからさまに肩を落として出て行った彼女の後ろ姿を、こっそりと横目で見送っていたら。
「鎌田先輩って、もしかして策士?」
唐突に小野寺が話しかけてきた。一瞬、言葉が出なかった――作戦がバレているのだろうか?
目の前にいる小野寺に視線を飛ばしてみると、どこか怜悧な眼差しで俺のことを見ている。
「何のことでしょうか?」
「先輩のデスクの上にある青いファイル、もしかして彼女が必要としているものじゃないんですかね」
そこを指差しながら、丁寧に指摘してきた。
「…………」
「珍しいですね、完璧主義の先輩がミスるなんて。何か俺に出来ることがあれば、率先して手伝いますよ」
微笑みの貴公子風な笑みを浮かべ、小野寺が提案してきたのだが。
(――コイツの笑顔が、実は厄介なんだ)
「申し出は有り難く、別の仕事で受け取らせてもらいます」
素っ気なく対応すると、意味深な笑みをキープしたまま凝視してきた。その視線に負けないように、メガネの奥から睨み返してやる。
「鎌田先輩ってば好きなコに対しては、いじめちゃうタイプだったりして? クラスに必ずいますよね、そういうヤツ」
「……何が、言いたいんです?」
「愛だの恋だのにうつつを抜かしてたら、仕事に支障が出るっていう真面目な話です。その内、足元をすくわれますよ」
「君と、一緒にしないでいただきたい」
手元にあるファイルを彼女のデスクに置き、小野寺からの視線を断ち切る様に背中を向けて、さっさとその場をあとにした。
「その資料、俺が持っていたことにしてもいいっすよ」
実にのん気な声が後ろからかけられる。
(俺に、恩を売るつもりなのだろうか――)
「一昨日のプレゼンで、助けてもらったお礼ですよ。深い意味はありませんから」
顔だけで振り返ると唇に人差し指を当てて、シーという仕草をしていた。
「そんな気遣いは結構です。午後からの会議のまとめを、しっかりして下さい」
「わっかりました、しっかりまとめまぁす!」
なぜか敬礼をして気味の悪い笑顔をしている小野寺を一瞥し、彼女がいる資料室に向かった。
あからさまに肩を落として出て行った彼女の後ろ姿を、こっそりと横目で見送っていたら。
「鎌田先輩って、もしかして策士?」
唐突に小野寺が話しかけてきた。一瞬、言葉が出なかった――作戦がバレているのだろうか?
目の前にいる小野寺に視線を飛ばしてみると、どこか怜悧な眼差しで俺のことを見ている。
「何のことでしょうか?」
「先輩のデスクの上にある青いファイル、もしかして彼女が必要としているものじゃないんですかね」
そこを指差しながら、丁寧に指摘してきた。
「…………」
「珍しいですね、完璧主義の先輩がミスるなんて。何か俺に出来ることがあれば、率先して手伝いますよ」
微笑みの貴公子風な笑みを浮かべ、小野寺が提案してきたのだが。
(――コイツの笑顔が、実は厄介なんだ)
「申し出は有り難く、別の仕事で受け取らせてもらいます」
素っ気なく対応すると、意味深な笑みをキープしたまま凝視してきた。その視線に負けないように、メガネの奥から睨み返してやる。
「鎌田先輩ってば好きなコに対しては、いじめちゃうタイプだったりして? クラスに必ずいますよね、そういうヤツ」
「……何が、言いたいんです?」
「愛だの恋だのにうつつを抜かしてたら、仕事に支障が出るっていう真面目な話です。その内、足元をすくわれますよ」
「君と、一緒にしないでいただきたい」
手元にあるファイルを彼女のデスクに置き、小野寺からの視線を断ち切る様に背中を向けて、さっさとその場をあとにした。
「その資料、俺が持っていたことにしてもいいっすよ」
実にのん気な声が後ろからかけられる。
(俺に、恩を売るつもりなのだろうか――)
「一昨日のプレゼンで、助けてもらったお礼ですよ。深い意味はありませんから」
顔だけで振り返ると唇に人差し指を当てて、シーという仕草をしていた。
「そんな気遣いは結構です。午後からの会議のまとめを、しっかりして下さい」
「わっかりました、しっかりまとめまぁす!」
なぜか敬礼をして気味の悪い笑顔をしている小野寺を一瞥し、彼女がいる資料室に向かった。