ドS上司の意外な一面
***

 微妙な距離感を保ちつつ、何となく仲の良い兄ちゃと姉ちゃ。久しぶりに二人で帰ってきた夜。

「ひとみ、明日の仕事は残業せずに定時で上がれそうですか?」

 姉ちゃの作ったゴハンを美味しそうに食べながら、兄ちゃが聞いてきた。

「頑張れば、何とかなりそうですけど」

「じゃあ頑張って下さい、バレンタインのお返しをしますから」

「チョコしかあげてないのに、スゴいお返しがきそうな予感」

 姉ちゃの弾む声が聞こえる。

「お返しが欲しければ、明日はしっかり仕事に励んで下さい」

「正仁さんエンターテイナーだから、楽しみにしながら頑張ります」

 二人が見つめ合って、ほんわかした空気が漂う。

「にゃあ~!」

 思わず、喜びの声をあげてしまった。

「八朔、何でそんな声を出したんです? 君には何もあたりませんよ」

「にゃん」(分かってるにゃ)

「ふふふ、八朔ってば何かあたると思って鳴いたんでしょ。食い意地はってるから」

「にゃ」(酷い)

 今はこんなに、楽しい会話が繰り広げられていたのに――
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