ドS上司の意外な一面

act:意外な優しさ(小野寺目線)

***
 俺にとっては超苦手な鎌田先輩が、資料室に向かったのをしっかり確認してから、ヤツのデスクにある書類を見やる。

 パラパラめくっていると、突然白紙が出てきた。

 不思議に思いながら、それを引っ張り出して中身を確認。裏面に書いてある文章を最後まで読みふける。その内容に、自然と笑みが浮かんでしまった。

「俺だけじゃなく、鎌田先輩も恋する男だったんだ。へぇ、なかなかいい詩、書いてるじゃないか。早速今夜これを使わせてもらおうかな」

 書類からそれをしっかり抜き取り、丁寧に折りたたんでから背広の内ポケットにしまう。そしてデスクを元の状態に戻してから、しれっとした顔で自分の席に戻った。

 利用価値のあるヤツが、自分の傍にいるのは有り難いね。

 くっくっくと笑いながら、言いつけられた仕事をしてやったのだった。
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