ドS上司の意外な一面
仲良く自宅に帰り着いた私たちを、八朔が駆け寄って出迎えてくれた。
「八朔、これから正仁さんとお料理の対決をするの。邪魔しないように大人しくしていてね」
「にゃぁん?」
「正仁さん、先にお台所使いま――」
言いかけていた言葉を、途中で飲み込むしかない。目の前で展開されている料理器具らしきものを次々と取り出す、正仁さんの顔がちょっとだけ怖いかも……。
「台所は君が先に使ってください。俺は買ってきた6種類のホールスパイスをスパイスグラインダーを使って潰して、調合作業をしなければいけないので」
「調合ですか。正仁さんは何を作る気なんでしょうか?」
スパイスという単語が出た時点で何となく作るものが限定されるのだけれど、聞かずにはいられない。
「インドカレーを作ろうと考えました。自分でスパイスを調合すれば、君好みの辛さの調整もできるでしょう?」
「え?」
「自分の家でカレーを食べていているときや外食で食べているときでも、どこか不満そうな顔をしているのを目にしていましたからね。いつかは美味しいカレーを食べさせてあげたいなと思っていたんです」
言うなりポケットからスマホを取り出して、メモ帳を見せてくれた。そこに書いてあったものは、食べたカレーの辛さや味付けの感じだけじゃなく、私と交わした会話までメモされているではないですか!
「俺が調合している間に、手際よく調理を終えて台所を明け渡してください」
「分かりました、善処します」
まるで業務命令をするような感じで告げられたせいで、ぴんと背筋が伸びてしまった。
「君の作るグラタン、楽しみにしてます。あっ、こら八朔! トマト缶は猫缶じゃないですよ、転がして遊んではいけませんっ」
料理対決をする私たちを翻弄するように、いたずら好きの八朔が時折邪魔をするというハプニングもあったけれど、失敗することなく無事にテーブルに並べる事ができたのだった。
「八朔、これから正仁さんとお料理の対決をするの。邪魔しないように大人しくしていてね」
「にゃぁん?」
「正仁さん、先にお台所使いま――」
言いかけていた言葉を、途中で飲み込むしかない。目の前で展開されている料理器具らしきものを次々と取り出す、正仁さんの顔がちょっとだけ怖いかも……。
「台所は君が先に使ってください。俺は買ってきた6種類のホールスパイスをスパイスグラインダーを使って潰して、調合作業をしなければいけないので」
「調合ですか。正仁さんは何を作る気なんでしょうか?」
スパイスという単語が出た時点で何となく作るものが限定されるのだけれど、聞かずにはいられない。
「インドカレーを作ろうと考えました。自分でスパイスを調合すれば、君好みの辛さの調整もできるでしょう?」
「え?」
「自分の家でカレーを食べていているときや外食で食べているときでも、どこか不満そうな顔をしているのを目にしていましたからね。いつかは美味しいカレーを食べさせてあげたいなと思っていたんです」
言うなりポケットからスマホを取り出して、メモ帳を見せてくれた。そこに書いてあったものは、食べたカレーの辛さや味付けの感じだけじゃなく、私と交わした会話までメモされているではないですか!
「俺が調合している間に、手際よく調理を終えて台所を明け渡してください」
「分かりました、善処します」
まるで業務命令をするような感じで告げられたせいで、ぴんと背筋が伸びてしまった。
「君の作るグラタン、楽しみにしてます。あっ、こら八朔! トマト缶は猫缶じゃないですよ、転がして遊んではいけませんっ」
料理対決をする私たちを翻弄するように、いたずら好きの八朔が時折邪魔をするというハプニングもあったけれど、失敗することなく無事にテーブルに並べる事ができたのだった。