嘆きの断片
「依頼の内容を直接、お聞かせ願えますか」

 まるで違和感のないラクベスの日本語に感心しつつ、それに応えるべく柄幹(えみき)は口を開いた。

「ここ最近、周辺で事故が多発しているんです」

 新しい道路が出来た訳でも、新しい規則が出来た訳でもない。なのに突然、事故発生率が三倍にもなった。

「それだけではないんです」

 ここのところ連日、救急車が走り回っている。

「病気も多発しているらしく、参拝者が増えました」

 参拝者の大半は住民で、それらが増しているとは知らず無意識に不安を抱いているのだろう。

「乱暴な人間も増えたような気がします」

 傷害事件の数は倍以上にもなり、パトロールの警官が増員された。確実に治安は悪くなっている。

「いつ頃からか、解りますか」

「半年以上は前からだと思います」

 徐々に増えていたため、正確な日にちまでは解らない。
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