嘆きの断片
 話を聞いているあいだにも警察車両が鳴らす、けたたましいサイレンの音が近づいては遠ざかる。

 すぐあとに、救急車もサイレンを鳴らしながら走り去っていった。

 慌ただしい日常を耳に捉え、ラクベスは宮司に視線を向ける。

「発生元や中心地は──」

「恥ずかしながら、解りません」

 病気は夜間に多く見られるものの、事故は夜間だけでなく明るい日中(にっちゅう)にも発生している。

「尋ねてみましょう」

「え?」

 そう言ってラクベスが摂社(せっしゃ)に向かう。

 境内の中に建てられている小さくこぢんまりとした社(やしろ)の前に立ち、手を合わせて目を閉じた。この神社の摂社は元々、この土地にいた神を祀っている。
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