嘆きの断片
丹後ちりめんだろうか。着物を作るときに出来る切れ端を使用していると説明書きがされていた。

 人気の商品なのだろう。他の商品に比べると品数が多めに感じられる。鈴のついた小さなストラップに手を近づけるも、それに触れることなく手を戻す。

 しばらく待ったが人がいる気配はなく、二人は無言で店から出た。

「留守か」

「またにしましょう」

 明日にでもしようと再び町の中を探索する。

 このとき、二人は何も言わなかったが店内に充満していた息苦しいほどの重たい空気に、元凶はまさしくここだと確信めいたものがあった。



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