嘆きの断片

 ──ラクベスはパーシヴァルと別れて一人、住宅街から少し離れた地域を歩いていた。個人経営だろうカフェを見つけ、古びたドアに手を掛ける。

 カウベルで作られたドアベルが低い音を鳴らし、店主に入店を伝える。

 それは、店主にとっても常連にとっても予想外の出来事だったのか、彼の容姿を見て戸惑いの表情を浮かべた。

「いらっしゃいませ」

 空いている席に腰を落とすラクベスに、店主の男性はいつも通りの対応で水の入ったグラスとメニューをテーブルに乗せる。

「ありがとう」

 その声に、敬遠気味だった店主は安心したのか小さな笑みを見せてカウンターに戻っていく。

 七十代と思われる店主が一人で経営しているようで、ウエイトレスなどの姿は見受けられない。

 一人で切り盛りできる数の客を相手に半ば、趣味ともいえるカフェの料理は数えるほどしかない。
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