嘆きの断片
──遠目に見る店は前回、訪れたときと明らかに違っていた。この世のものではない黒いもやが店から溢れている。
「雰囲気わりいなあ」
そう言ったパーシヴァルにラクベスは口角を緩める。
見えない人間からすれば、店の印象はそんなところだろう。しかれど、彼らにしてみれば呼吸さえ難しくさせるほどの圧迫感が伝わってくる。
扉を開くと、いっそう重くのしかかる黒いエネルギーが体にまとわりつき、腕を動かすのも若干の辛さを感じる。
「いらっしゃい」
さして明るくもない声が店の奥から聞こえ、その男は陰気な顔つきで二人を見やった。以前と同じく薄暗い店内に、今日は薄気味悪い店主が座っている。
その目に生気はなく、それでいて送られる視線にはどこかしら鈍い棘を含んでいた。
ラクベスは躊躇いもなく奥に進んで男を見下ろすと、カウンターの側にあるストラップを手に取る。