嘆きの断片
パートナーを組むにあたり、こいつは俺について事前によく調べていた。日本に向かう数日前には挨拶にも来て、俺は随分と好印象を持った。

 仕事をスムーズにこなすために必要なことだが、そういう部分も高評価につながっている。

「今夜、やるか」

「はい」

 ──二人は深夜の行動を考慮してホテルに戻って早々、着替えることもなく照明を落としベッドに横たわる。

 外はまだ多くの人が活動している時間だ。車の走る音は途切れることなく、ラクベスたちの耳に低く伝わってくる。

 どういう状況にあっても眠れる訓練を受けている二人にとって、この程度は静かな方である。

 そうして、薄暗い部屋に秒針の進む音だけが響く。いつでも起きられるようにと、二人は深い眠りにはつかない。




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