嘆きの断片
「あらゆる状況に対応出来るようにな」

 こういう場合にも役に立つ。まあ、お前の登場にいささか狼狽(うろた)えちまったがと肩をすくめた。

 答える前に浮かべた笑みは、彼らの背景にある何かしらの重たいものなのだろうと室田はそれ以上、尋ねることはしなかった。

 何より、たったいま起きていることを追うだけで脳が手一杯だ。自分にはまったくなかった世界に飛び込んでしまったことに、室田は少しの後悔を覚えた。

 しかし、今さら逃げ出せない。逃げたくない。

 逃げたいと思いながらも、心の底ではこれを見届けたいと心臓が高鳴っている。ラクベスという青年がどう闘うのか、室田はそれが見たくて仕方がなかった。




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