嘆きの断片
「なんだ?」

 パーシヴァルの隣で様子を窺っていた室田は、いぶかしげに眉を寄せた。

 上空から光が舞い降り、一瞬にしてラクベスの体に吸い込まれた途端に彼の顔つきが変わった。

 いや、顔つきだけじゃない。髪の色は赤黒く、目尻は吊り上がって瞳の色もやや黄色を帯びている。

「あなたではない。──仕方がない」

 何かの手違いでもあったのか、ラクベスは苦々しくつぶやき身構えた。

「おい、あれはなんだ」

 別人になったじゃねえか。

「神霊を降ろしたんだよ」

「神霊だあ!?」

 そんなもん降ろせるのかよ。ていうか、なんで見た目まで変わってやがるんだ。

 室田の驚きをよそに、パーシヴァルはラクベスの様子がどうもおかしいと目を眇めた。さらに、パーシヴァルが予想していたよりも神霊を降ろした状態で放たれるエネルギーが少ないようにも思える。

 調子でも悪いのか?
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