嘆きの断片
「うん? あの気は──土地神のものじゃねえか。なんだってあれが降りてんだ」

 あの土地神じゃあ勝てねえぞ。

「おいおい。出張ってきやがって。悔しいのは解るが」

「なんだよ。何がどうした」

 頭を抱えているパーシヴァルに状況が飲み込めない室田は、俺を不安にさせるなよと顔をしかめた。

「降ろすはずの神霊じゃなく、ここの土地神が無理矢理、降りてきやがった」

 一度降ろしているせいか、それなりに強い神霊のため強制的に降りられるようになったらしい。無理に外せば失礼にもあたるぶん、悪霊より厄介だ。

「なにそれ!?」

「自分が護る土地を好き勝手されて怒ってはいたが……。あれは出て行く気配ねえな。もう一体、降ろせば問題はないか」

「まてよ。神霊をもう一体だって?」

 同じ体に二体も神霊を降ろせるのか?

「二体どころじゃねえよ」

 五体は軽く降ろせるんじゃねえかな。

「いやいやいやいや!? そんなの普通、無理だって!」

「あいつは特殊な霊媒体質でね」

 世界に唯一といっていい霊媒士だ。

 とはいえ、何体もの神霊を一つの体に詰め込むのは簡単なことじゃない。それを可能にしたのは、ラクベスの努力があってこそなのだ。
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